自社は日本版DBSの認定対象か──民間教育事業の五要件と対象従事者の判定
認定を検討する前に確かめておきたいのは、二つの判定です。自社の事業が認定対象となる民間教育事業に当たるのか。そして、こどもと接する人のうち、誰が犯罪事実確認の対象となるのか。二つは別の話であり、片方だけを見て判断すると、申請の準備が空振りに終わります。
判定その一──民間教育事業の五つの要件
学習塾、スポーツクラブ、ダンススクールなどが民間教育事業に当たるためには、主に次の要件を確認します。
1. こどもに技芸や知識を教える事業である
学習指導に限りません。スポーツ、ダンス、音楽、芸術、演技、プログラミングなど、教える内容は幅広く含まれます。大人とこどもの両方を対象としている事業も該当し得ます。一方、大人向けの講座に例外的にこどもが参加しただけでは、対象になりません。
2. 標準的な修業期間が6か月以上である
同じこどもが複数回参加でき、6か月以上にわたって指導を受けられる事業かどうかを確認します。毎週開催する教室に限らず、月1回の教室や、季節ごとに実施する一連の体験プログラムも該当する可能性があります。単発イベントのみであれば、通常は継続性が認められにくいと考えられます。
3. 対面で指導する
民間教育事業の認定要件では、こどもに対する対面指導が求められます。
ただし、対象となる従事者を判断する場面では、SNS、コミュニケーションアプリ、オンライン学習ツールによる接触も無視できません。教室では集団指導であっても、授業後に講師と生徒が個別にメッセージを交換している例は、教育現場では珍しくありません。便利な連絡手段は、第三者の目が届きにくい接触にもなります。
4. 事業者が用意した場所で指導する
事業者の教室や施設など、事業者が用意した場所で指導することが要件です。公園、体育館、貸会議室などを利用する場合も、契約や利用形態を含めて、誰が事業のために場所を用意したのかを確認します。
5. 教える人が3人以上いる
技芸や知識を教える人が3人以上いることが要件です。人数には、正社員だけでなく、派遣労働者、業務委託の講師、ボランティアなども含まれ得ます。契約書の名称ではなく、実際に何をしているかで判断されます。
一人会社や二人だけの教室は、少なくとも民間教育事業の人数要件を満たしません。ただし、学校や別の対象事業者から業務を受託し、対象業務へ継続的に従事する場合は、別の確認が必要です。自社が認定対象にならないことと、自分が対象従事者にならないことは、同じではありません。
判定その二──対象業務は支配性・継続性・閉鎖性で見る
こどもと接する人が、すべて犯罪事実確認の対象になるわけではありません。
対象業務に当たるかは、業務上こどもと接する中で、支配性、継続性、閉鎖性の三つをすべて有するかを確認して判断します。職種名や雇用契約の名称だけでは決まりません。一つの要素だけで対象業務と決まるわけではなく、実際の業務について三つを合わせて確認します。
- 支配性は、指導やコミュニケーションを通じて、こどもに対する優越的な立場に立つ機会があるかどうかです。講師と生徒、コーチと選手という関係では、支配性が認められやすくなります。
- 継続性は、同じ事業の中で、こどもと日常的、定期的、反復的に接するかどうかです。年1回だけ講演するゲストスピーカーなど、接触が一時的な人は、継続性がないと判断され得ます。一方、1回の勤務が短くても、年間を通して複数回指導する人は、単発扱いにならない可能性があります。
- 閉鎖性は、ほかの職員や保護者の目が届かない状況で、こどもと接する機会があるかどうかです。講師一人と生徒一人の場面に限りません。講師一人と複数の生徒であっても、第三者の目が届かなければ閉鎖性が認められ得ます。個別のメッセージやオンライン面談についても確認が必要です。
職種名だけで一律に決めるのではなく、実際の働き方を見なければ判断できません。
判定に迷いやすい場面
実務では、次のような場合に判断が分かれます。
- 複数の教室やサービスを運営している場合、事業ごとに区分が異なる可能性があります。学習塾と単発の講演事業を併営しているなら、前者だけが認定対象となることもあります。
- フランチャイズ本部と加盟店が別の事業者である場合、認定の申請主体と申請単位を個別に整理する必要があります。本部が認定を受けることで、すべての加盟店が当然に認定事業者となるわけではありません。
- 業務委託の講師やボランティアについては、契約の形式ではなく、こどもとの接し方で対象業務該当性を判断します。「委託だから対象外」という整理は成り立ちません。
- 対面指導とオンライン指導を併用している場合、認定要件としての対面性と、対象従事者を判断する際の接触の実態を、分けて確認します。
判定の次に来るもの
自社が認定対象に当たると分かった時点で、次に決めるのは、どの事業について誰が申請するのか、対象従事者をどう特定するのか、犯罪事実確認に関する情報を誰がどこまで扱うのか、といった運用の設計です。
認定は、規程を揃えれば取得できるものではありません。複数の施設や現場で実際に運用できるルールにしておかなければ、認定後の措置が続きません。
当研究所では、認定の対象となる事業と従事者の整理から、規程・報告ルールの作成、情報管理方法の設計、認定申請までを支援しています。
出典:こども家庭庁「こども性暴力防止法(学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律)」
https://www.cfa.go.jp/policies/child-safety/efforts/koseibouhou